日本の家族信託制度

日本では、平成19年(2007年)9月に改正信託法が施行になり、これまでの贈与・成年後見人制度・相続とは異なる新たな財産管理・承継の方法として家族信託と言う手法が可能となりました。

これは、本人が自身の病気や認知症になるリスクを想定して、自身の判断能力が未だ十分ある時に、自身の財産の管理・運用・処分・利益配分を信頼のおける家族に事前に委託しておくと言う事です。その財産には、現金・預貯金・有価証券・不動産・動産や、知的財産権も含まれます。

この家族信託の手法を活用する事によって、贈与税や相続税を節税出来ると言う様なメリットは有りませんが、例え自身が病気や認知症になってもご自身の財産の管理・運用・処分・利益配分をその信託契約に基づいて執行の継続する事が出来ます。或いは、それを自身の死後に執行する事として、遺言書とする事も可能です。

贈与・成年後見・相続と家族信託の夫々のポイントは以下の通りです。

贈与 贈与の基礎控除は年110万円。それを超えた分に10%~55%の贈与税が掛かる。60歳以上の父母・祖父母が20歳以上の子・孫に対して行う贈与については、生前贈与として累計で2,500万円まで非課税扱いとする事も可能。
成年後見 本人に判断能力が認められる場合の任意後見と、既に判断能力が無いと認められる場合の法定後見がある。財産は、本人の為にのみ取り崩し可能で、財産の運用・処分・贈与は家庭裁判所の許可無しでは不可 – ほぼ認められない。毎年、家庭裁判所への会計報告義務有り。
相続 本人(被相続人)が死亡して、遺言書が執行される。相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円 X 法定相続人数。それを超えた分に10%~55%の相続税が掛かる。配偶者には1億6千万円の控除有り。
家族信託 本人に判断能力の有る間に家族信託契約を結ぶ事により、本人の財産の管理・運用・処分を信託目的に従って家族に委託出来る。委託者と受益者が同一の場合は、その所得に対して贈与税は掛からないが、受益者が別の場合は贈与税が掛かる。本人が死亡後に執行する形として、遺言信託も可能。その際、一次相続のみならず、二次・三次相続についても指示可能。

家族信託は、以下の全てを記載して生存中に信託行為を執行する信託契約、又は、本人死亡後に執行する遺言信託とする事が出来ます。以下に家族信託の例を挙げます。

委託者(父親本人が)
受託者(長男に)
受益者(父親本人の為に)
信託財産(父親本人所有の自宅、賃貸アパート、定期預金を)
信託目的(父親本人の介護施設への入居費用の捻出、将来への投資の為に)
信託行為(父親本人所有の自宅の売却、賃貸アパートの建て替え、定期預金の解約をする)

上記の例では、現在の成年後見制度では、本人の財産の保全が第一目的で、自宅の売却や賃貸アパートの建て替え、定期預金の解約等は、家庭裁判所の事前の許可が必要で、それは、ほとんどの場合認められないと言われています。そこで、その様な場合により柔軟に対応出来る様に、この家族信託と言う制度が新たに出来ました。

家族信託の主な活用方法(二大メリット)

埼玉県東松山市の司法書士柴崎智哉氏の”家族信託の主な活用方法(二大メリット)のビデオです。(11分52秒)

一般社団法人家族信託普及協会

より詳しくお知りになりたい方は、一般社団法人家族信託普及協会と言う民間団体のインターネットサイトをご覧頂き、更に理解を深め、弁護士・司法書士等の専門家とも相談される事をお勧めします。

一般社団法人 家族信託普及協会
 http://kazokushintaku.org