成年後見制度

成年後見制度

人は、加齢とともに、記憶力・判断力が衰えていき、色々なトラブルに巻き込まれてしまうケースがあります。 必要のない物を大量に買ってしまったり、悪質な訪問販売・悪徳商法等の被害に合ったり、生活に必要なお金の管理や買い物、契約などが出来ない、そして、家族に勝手に預金通帳・印鑑を悪用されて預金を使い込まれたり、本人の意思に反して資産の売却・施設へ入居させられたりするケースもあります。

それらの正常な判断力が低下している高齢者や、知的障がい者、精神障がい者の財産を管理し、契約などの法的な面から日常生活を守る為に、英国にはLasting Power of Attorney と言う制度、日本には成年後見制度が有ります。

 

英国のLasting Power of Attorney

英国では、本人が何らかの事故や病気で判断が出来ない場合、本人に代わって第三者の代理人にその判断を委ねる事を可能にする制度として、永続委任 - Lasting Power of Attorney と言う制度があり、それは法律的に拘束力が有ります。 その永続委任は、委任状作成時点で、本人が18歳以上で、そして健全な精神を保持している事が条件です。 その際、英国居住者である事や英国籍である必要は有りません。

委任内容によって、健康・福祉に関する事と、不動産・金融等の資産管理に関する事と2種類あります。

委任状作成方法・登録先 先ず代理人を定めます。代理人は複数でも構いません。所定の代理委任申請用紙に代理人の詳細を記入し、後見人登録事務所(Office of the Public Guardian)に登録。所要時間は約10週間。登録後に、その委任状は初めて有効になり、代理人が委任行為を行う事が出来ます。
委任内容例 委任内容は主に以下の2種類です。
(健康・福祉に関する事)
毎日の洗濯・衣服・食事に関する事、医療処置、ケアホームへの引越し、生命維持処置(不動産・金融等の資産管理に関する事)
金融口座管理、請求書の支払い、年金・手当の受け取り、自身の不動産の売却
代理人 代理人は18歳以上であれば誰でも良いですが、信頼のおける、そして万一の場合に、本人の代理人を喜んで引き受けてくれる方で、親戚、友人、弁護士、配偶者等の中から選任するのが一般的です。
署名 委任状を作成後、指定した代理人、証人が署名。
委任状の変更・廃止 委任状の内容を変更・廃止したい時や、代理人が死亡したりした場合は、後見人登録事務所(Office of the Public Guardian)に手続きが必要です。
本人死亡の場合 本人死亡の場合、永続委任状は自動的に失効します。そして、本人に関わる事柄は、委任代理人では無く、相続執行人、又は本人代理人に引継がれます。

この永続委任制度を利用し、永続委任状を作成すべきか否か、その作成方法、登録等について相談したい場合は、以下の事務所にお問い合わせください。

Office of the Public Guardian
PO Box 16185, Birmingham, B2 2WH
Tel : 0300 456 0300
Email : customerservices@publicguardian.gsi.gov.uk
Web : https://www.gov.uk/government/organisations/office-of-the-public-guardian

更に、以下に永続委任に関するサイトを参考にして下さい。

GOV.UK – Make decisions on behalf of someone
https://www.gov.uk/make-decisions-for-someone

GOV.UK – Make, register or end a lasting power of attorney
https://www.gov.uk/power-of-attorney

 

日本の成年後見制度

1) 成年後見制度
日本の成年後見制度は2000年に施行されました。 認知症などにより判断能力が衰えたり、知的・精神障がい者で権利を守られる人を成年被後見人、権利を守る人を成年後見人と言います。成年後見人が行う内容は、以下の二つに分類されます。

身上監護 医療・介護保険の手配・契約等を含む被後見人の生活や療養に関する事
財産管理 毎月の電気・ガス・水道料金の支払い、高齢者施設への入居・契約・支払い等を含む被後見人の預貯金や不動産などの管理。

2) 2種類の成年後見制度
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類が有ります。

法定後見制度 既に判断能力が不十分な人の為の制度。本人、配偶者、又は本人の四親等以内の親族が家庭裁判所へ申請し、成年後見人候補者の適否の審判を仰ぎ、成年後見監督人も選任する。成年後見人は、行った業務(後見事務)内容を全て家庭裁判所に報告し、チェックを受ける。
任意後見制度 未だ本人の判断能力がある内に将来判断能力が衰えた時に備え、任意後見契約を結ぶ。実際に判断能力が不十分になった時に、契約に基づいて、業務を代行してもらう制度。

任意後見契約は公正証書として契約し、公証役場から東京法務局に任意後見登録の手続きをする。本人の判断能力が衰え、本人・親族などが家庭裁判所へ申し立てを行い、任意後見監督人を選任して、任意後見監督人が決まった時から契約内容が発効する。

3)法定後見制度の判断能力の3つの類型
本人の判断能力が不十分と認められる場合、その制度によって以下の後見、保佐、補助の3つの分類に分けられます。

後見 自分の子供や親族が誰なのか分からず、常に判断能力が殆ど無い状態。成年後見人は、本人の代わりに契約等を行う代理権、及び本人が行った契約を取り消す取消権が認められる。
保佐 1万円札と5千円札の区別がつかなかったり、火の元の管理を頻繁に忘れるなど、判断能力が非常に衰え、著しく不十分な状態。成年後見人は、民法で定められた9項目(預金、土地、貸家等の取引、借金、保証人、不動産の売買、相続の承認・放棄・遺産分割等)に同意する同意権が認められる。
補助 預貯金の出し入れに不安で、判断能力が少し衰え、不十分な状態。成年後見人は、上記の明法で定められた9項目の内、家庭裁判所への申し立てによって認められた行為に限定して同意権が認められる。

4) 成年後見人になれる人
成年後見人になる為には、20歳以上であれば良く、特別な資格は必要有りません。また、個人でなくとも、弁護士事務所、司法書士事務所、成年後見業務を行っているNPO団体等の法人も成人後見人となる事が出来ます。

 

例え本人の判断能力が十分でなくとも、人間誰もが一人の人間としての尊厳・意思が有ります。成年後見人は一人一人の尊厳・意思を尊重し、本人の健康・精神状態を十分配慮し、本人の望んでいる事、必要な事を最善の方法で実現させる事が期待されます。

 

日本の成年後見制度についてより詳しくお知りになりたい方は、以下のウェブサイトをご覧ください。

成年後見制度
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.htm/

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート
https://www.legal-support.or.jp/