英国のeVisa

2025年1月1日から英国で全面的に運用が開始されるeVisa(電子査証)についてその概要を以下に纏めます。

これは英国に6ヶ月以上長期居住の英国籍・アイルランド国籍を除く全ての外国籍者は全員対象と成りますので是非この新制度を正しく御理解頂き、2024年内にeVisaへ移行出来る様に出来るだけ早く必要な手続きを済ませる様お薦めします。しかし、Home Officeは2024年12月4日に、eVisaへの移行期限を2024年12月31日から2025年3月31日に3ヶ月延長する事を発表しました。詳しくはこちらをご参照下さい。

但し、既に英国のILR Indefinite Leave to Remain を取得済みで、古いパスポートにILR のスタンプが押印されていたり、スティッカーが貼り付けられている人は、そのILRは2025年1月1日以降も有効で、eVisaへの移行は義務では無く、推奨です。

 

概要

英国Home Office(内務省)は、これまで英国・アイルランド国籍以外の外国籍の方の英国に6ヵ月以上の長期滞在ビザは、古くはパスポートへのスタンプの押印、又はスティッカーの貼り付け、そして2012年以降は非EEA諸国の人にBRP(Biometric Residence Permit)が、そして2015年以降EEA諸国の人にBRC(Biometric Residence Card)と言う顔写真・指紋の生体情報入りのプラスティックカードが発行されて来ました。

しかし、2023年10月30日に政府の公式サイトGOV.UK で、2025年1月1日以降はBRP・BRCに替えて全面的にeVisa(電子査証)でOnlineでのデジタル管理に移行する方針を発表しました。(こちら)

このeVisaの導入により、以下の利点をもたらすと言われています。

  • セキュリティの強化 : これまでのパスポートへのスタンプの押印・スティッカーの貼り付け・BRP・BRCカードの改竄・偽造がより困難になり、国境・その他でのセキュリティが強化される
  • コスト削減 : ビザの申請・発給・管理プロセスを効率化し、コスト削減に繋げる
  • ビザ保有者の利便性の向上 : Onlineで自身のビザのステータス・条件の確認、第三者へのビザの提示、連絡先(電話番号・メールアドレス・氏名・国籍・パスポート番号等)の更新が容易となり、紛失・盗難のリスク低減

このHome Officeの方針に基づいて、BRP・BRCと言うプラスティックカードを保有している方と、BRP・BRPは保有せず古いパスポートにILRのスタンプの押印、又はスティッカーが貼り付けられている方とeVisaへの移行の必要な手続きが以下の様に異なりますのでご留意ください。

 

BRP・BRCを保有している方

BRP・BRCのプラスティックカードは殆どが2024年12月31日が有効期限となっています。それらを保有している方は、当面は特にご自身で対応する必要は無く、2024年4月以降夏頃までに順次Home Officeの準備が整い次第メールが送信されます。メールが送られて来ましたら、その指示に従ってHome OfficeのUKVI(UK Visa & Immigration)システムへアカウント登録し、eVisaへの移行手続きを済ませる必要が有ります。

その後Home Officeは2024年8月6日に、UKVIのサイトを通じてBRP・BRCを保持している人は、UKVIからのメールを待たずにUKVIのサイトに行ってUKVIのアカウント登録・eVisaへの移行手続きをする事が出来ると発表しました。従いまして、BRPを保持している人は、速やかにUKVIのアカウント登録・eVisaへの移行手続きを進めることをお薦めします。詳しくはこちらをご参照ください。

尚、BRP・BRCカードを所有している人のeVisaへの移行期限は、2024年12月31日から2025年3月31日まで3ヶ月暫定的に延長れれる事がHome Officeは2024年12月4日に発表しました。詳しくは、こちらを御っ参照下さい。

 

古いパスポートにILRのスタンプが押印、又はスティッカーが貼り付けられている方

一方、英国の ILR を取得していて、BRP・BRCのプラスティックカードは保有せず、古いパスポートにILRのスタンプが押印、又はスティッカーが貼り付けられている人は、そのILRは2025年1月1日以降も従来通り有効で、eVisaへの移行は義務では無く、推奨です。詳しくはこちらをご参照下さい。

しかし、敢えて古いパスポートのILRのスタンプやスティッカーをこのeVisaへの移行を希望する人は、先ずはNTL No Time Limit Applicationをする必要があります。

そのNTL申請には以下の四つのステップ があります。

1)UKVI(UK Visa and Immigration)のサイトに行き、自身の個人情報の入力 (こちら)

  • 自身の氏名・メールアドレス・住所・その住所に住み始めた時期・性別・婚姻関係・国籍・生年月日・出生国・電話番号・英国の滞在年月数
  • パスポートの詳細(番号・発行機関・有効期限)
  • 戦争犯罪・テロ活動への関与・英国での刑法・民法違反歴
  • ILRの取得年月日・Home OfficeからのILR承認の日付・Ref 番号
  • 英国を6ヵ月以上の出国履歴とその理由
  • 英国NI(National Insurance)番号等

2)  UKVCAS(UK Visa & Citizenship Application Services)のサイトで、本人の顔写真の撮影・指紋の採取・パスポートのスキャンの予約を取る (こちら)

3)そのUKVCASとの予約日の前日までに以下の書類をUKVCASのサイトからアップロード(こちら)

  • 必須書類 : 現住所を証明する書類・現在のパスポート
  • その他書類 : ILR取得後に英国に継続して居住していた事を証明する書類を毎年分(Council Taxの請求書・登録GPからのレター・電気・ガス・水道等の公共料金の請求書・就労・就学証明書のいずれか)しかし、このILR取得後に英国に継続して居住していた事を証明する書類は、2024年10月14日以降の申請では手続きの簡素化で不要となりました。
  • ILRのスタンプが押印・スティッカーが貼り付けられているパスポート・Home OfficeからのILRを承認するレター(R60)
  • ILR取得後の失効した分を含む全てのパスポート
  • 提出書類が真正で有るかどうかをHome Officeが第三者機関に調査する事に対する本人の同意書、提出書類が共同名義で有る場合はその共同名義人の同意書、及び申請者が財政的な支援を受けている場合はその支援者からの同意書
  • その他NTL申請に有益と思われる任意の関連書類(Tax Return 確定申告書・P60 End of year certificate・NI National Insurance Contribution納付履歴等)

4)UKVCASとの予約の当日に顔写真の撮影・指紋の採取・パスポートのスキャン

上記の手続きを全て済ませますと、1ヶ月から6ヶ月以内にUKVIからNTL申請の承認のメールが送付され、その2~3日以内に2024年12月31日まで有効期限のBRP カードが送付されます。BRPカードを受領後、UKVIのサイトに行き、その BRP 番号でアカウント登録し、必要事項を入力する事で、eVisaへの移行の手続きが完了し、ご自身のeVisaをスマホ・タブレット・PC等の端末でいつでも表示出来る事になります。

但し、2024年10月31日以降は、BRPカードは送付されず、BRP番号無しでアカウント登録をしてeVisaへの移行の手続きをします。

 

追加情報

1)費用
このeVisaへの移行・NTL(No Time Limit)の申請手続きは無料です。しかし、UKVCASでの顔写真の撮影・指紋の採取・パスポートのスキャンは、そのサービスポイントの場所・予約の曜日・時間帯によって無料・有料(£140~£290)と様々です。このUKVCASのサービスポイントは英国全土に数十カ所あり、ご自分の都合の良い場所を選んで予約します。

2)追加有料サービス
UKVCASでは、その予約時に通訳(£49)・書類の確認(£49)・書類のスキャン・アップロード(£56)等の有料サービスも有ります。

3)必要書類
NTL申請書類で、現住所を証明する書類(英国運転免許証・Council Taxの請求書・電気・ガス・水道料金の請求書・銀行口座ステートメント・登録GPからのレターの何れか)と、自身の現在のパスポートのコピーは必須です。

しかしその他の書類で、英国ILR取得後に継続して英国に居住していた事を証明する書類(Council Taxの請求書・登録GPからのレター・就学・就労証明・電気・ガス・水道料金の請求書の何れか)の毎年分・ILRが承認されたHome Officeからのレター・ILR取得後の失効した分を含む全てのパスポート・提出した証拠書類が真正で有るかどうかをHome Officeが調査する事への同意書等は必ずしも全てを揃えなければならないと言う訳では有りません。既に廃棄・紛失したとして無いものは無く、可能な範囲内で準備して下さい。

但し、2024年10月14日以降、英国ILR取得後に継続して英国に居住していた事を証明する書類は、手続きの簡素化で不要となりました。

4)必要書類のフォ-マット
UKVCASのサイトからアップロードする書類はPDFフォーマットが推奨されていますが、スマホやタブレットの内蔵カメラで撮影したJPGやPNGの画像フォーマットでも受け付けられます。

5)UKVCASの予約当日に持参すべき物
UKVCASとの予約の当日に持参すべき物はUKVCASの予約のQRコードが表示されている予約確認票と現在有効のパスポートの2点です。その他の書類は、UKVCASに書類の確認・スキャン・アップロードの有料サービスを予約していない限り、持参する必要は有りません。

6)eVisaへの移行手続き
このeVisaへの移行手続きについては、UKVIのサイトに「Updating your physical document to an eVisa does not affect your immigration status or the conditions of your permission to enter or stay in the UK.」と、皆さんが既に取得済みのビザやその条件は、このeVisaへの移行手続きによって影響を受け無いと明記されています。

7)期限
このeVisaへの移行手続きは、出来る限り2024年内に済ませる様最善の努力をして下さい。もし2024年内にeVisaへの移行手続きが完了せず、2025年1月1日以降にずれ込んだとしてもILRの取り消し・国外退去・再入国拒否などは有り得ないと思われます。しかし、その後、eVisaへの移行期限は2024年12月31日から2025年3月31日に3ヶ月延長になる事をHome Officeは2024年12月4日に発表しました。詳しくはこちらをご参照下さい。但し、既に英国のILR Indefinite Leave to Remain を取得済みで、古いパスポートにILR のスタンプが押印されていたり、スティッカーが貼り付けられている人は、そのILRは2025年1月1日以降も従来通り有効で、eVisaへの移行は義務では無く、推奨です。

8)国際輸送事業者のチェックイン時のeVisa事前審査
とは言いながらも、一般的に航空・船舶・鉄道の国際輸送事業者は乗客が有効なパスポートと渡航先の国に入国する為にビザが必要でしたら、そのビザを保有しているかどうかをチェックイン時に確認する義務が有ります。そして、2024年末頃からそれらの英国向け国際輸送事業者はこの英国のUKVIシステムにアクセス可能となり、英国を最終目的地とする乗客が英国のeVisaを保有しているか否かを確認出来る様になります。従いまして、2025年1月1日以降、英国を最終目的地とする乗客のeVisaもUKVIシステムで確認し、それが確認出来ない場合はどうなるのか、その辺を輸送事業者がどこまで厳密に、又は柔軟に対応するかは不明です。もし、適切なeVisaや従来のILRを保持しているにも拘わらず英国行きのフライト等への搭乗を誤って拒否された人は、航空会社等にHome Officeの航空会社サポートハブに電話するよう依頼することが出来ます。(こちら

9) 英国入国審査
2025年1月1日以降、未だeVisaへの移行手続きが済んでいないのにも拘らず何とか英国向けの飛行機に搭乗出来たとして、ではその様な人が英国入国審査ですんなり入国が認められるか、審査にどれだけ余分な時間が掛かるかも不明です。一方、eVisaへの移行期限は2024年12月31日から2025年3月31日に3ヶ月延長する旨、Home Officeは2024年12月4日に発表しました。詳しくはこちらをご参照下さい。但し、既に英国のILR Indefinite Leave to Remain を取得済みで、古いパスポートにILR のスタンプが押印されていたり、スティッカーが貼り付けられている人は、そのILRは2025年1月1日以降も従来通り有効で、eVisaへの移行は義務では無く、推奨です。

10) 英国弁護士の懸念
英国の多くの弁護士グループは、このeVisaへの移行期限を2025年1月1日とするのは余りに性急で、2~3年の猶予期間を設けるべきとの意見表明し、Home Officeに再考を促しているとの事で、今後の推移を見守りたいと思います。その後、このeVisaへの移行期限は2024年12月31日から2025年3月31日に3ヶ月延長する事をHome Officeは2024年12月4日に発表しました。詳しくはこちらをご参照下さい。

11)Council Tax
参考情報として、英国でCouncil Taxと言う今の住宅の評価額をベースとした地方税が導入されたのは1993年からで、それ以前は1990年から世帯の居住成人数をベースとしたCommunity Charge(Poll Tax)と呼ばれ、更に以前は今のCouncil Taxの様に住宅の評価額をベースとしたDomestic Ratesと呼ばれていました。

 

Q&A

eVisaへの移行やNTL No Time Limitの申請手続きについて、左のQ&Aの画像をクリックしますとeVisaのQ&Aのページに行き、皆さんからこれまでに寄せられた質問とそれに対する私からの回答をご覧頂けます。

 

関連情報

英国のeVisaに関連する資料・UKVI・UKVCAS公式サイト・YouTube動画・NTL No Time Applicationの同意書・就労証明書の例文・NTL 必要書類チェックリスト・メディアの関連記事の一覧です。

Ref Contents
1 英国eVisaへの移行 ‐ May 2024
英国のeVisaへの移行手続きについて高嶋が作成した39ぺージのプレゼン資料です。
2 英国eVisaへの移行 ‐ Part 2 August 2024
BRP Biometric Residence Permitの保持者がeVisaへ移行する為の手続きについて高嶋が作成した14ページのプレゼン資料です。
3 英国eVisaへの移行 – Final November 2024
英国eVisaへの移行の為のNTL 申請が承認された後、従来はBRPカードが郵送されましたが、2024年10月31日以降はBRPカードは郵送されず、BRP番号のみ連絡されると思われます。その後、eVisaを閲覧する為のUKVIアカウントの登録、UKVIのサイトで自分のeVisaを閲覧する方法を解説します。
4 UK eVisa NTL Application
JSC Japan Senior Communityの会員のNTL No Time Limit 申請・認可状況です。
5 Transfer to UK eVisa English version
6 英国Home OfficeのeVisaへの移行に関する公式サイトです。
7 英国Home Office in the media – Media factsheet : eVisasです。
8 英国Home Office in the media – メディアファクトシートです。(高嶋が翻訳した日本語版)
9 No Time Limit(NTL)version 16.0 – Guidance for caseworkers on how to make decisions on no time limit applications
10 BRP・BRCを保有せず古いパスポートにILRのスタンプが押印、又はスティッカーが貼り付けられている方のNTL(No Time Limit)申請のUKVIの公式サイトです。
11 UKVCASで顔写真の撮影・指紋の採取・パスポートのスキャンの予約、及びNTL申請の必要書類のアップロードの公式サイトです。
12 What is an eVisa ?(2:03)Official YouTube video released by Home Office on 17.4.2024
13 How to create a UK Visas and Immigration (UKVI)account and get access to your eVisa (5:00) Official YouTube video released by Home Office on 15.5.2024
14 How to Travel with Your eVisa(4:19)Official YouTube video released by Home Office on 6.8.2024
15 How to create a UK Visas and Immigration(UKVI)account and get access to your eVisa(5:08)Official YouTube video released by Home Office on 6.8.2024
16 Part 1 : Consent for the Home Offie to verify application information(提出書類についてHome Officeが第三者機関に調査する事への申請者本人の同意書)
17 Part 2 : Consent for the Home Office to verify third party information(提出書類が他の方と共同名義になっている場合、Home Officeが第三者機関に調査する事へのその共同名義人の同意書)
18 Part 3 : Consent for the Home Office to verify information from third party sponsor(申請者に財政的に支援するスポンサーが居る場合、Home Officeが第三者機関にその申請書類を調査する事への財政的スポンサーの同意書)
19 2024年5月29日英国日本人会 eVisa・NTL申請説明会の報告
20 書類のPDFファイルへの変換
21 就労証明書サンプル
22 NTL No Time Limit Application必要書類Check List
23 TFC Legal 総合法律事務所
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https://tfclegal.co.uk
英国のeVisaへの移行に伴うNTL申請代行サービスは£250+VAT
24 英国ETA
2023年11月22日付け記事 2024年までにeVisaが英国の移民資格に取って代わる
25 英国ETA
2024年4月4日付け記事 内務省、BRP所持者にeビザへの切り替えの連絡を開始
26 Independent
2024年4月17日付け「Rollout of eVisa begins as Government aims for digital immigration by 2025」
27 JETRO 日本貿易振興機構
2024年4月24日付け記事「電子ビザの移行にかかる措置発表」
28 The Guardian
2024年5月18日付け記事「Fears of new Windrush as thousants of UK immigrants face “cliff edge” visa change」
29 Citizens Advice
Getting an online immigration status(eVisa)
30 英国ニュースダイジェスト
2024年7月4日付け1654号 「2025年1月1日から英国でeVisa(電子査証)が運用開始」
31 週刊ジャーニー
2024年7月11日付け1350号「あなたのビザはどうなる? eVisa申請への道第一回」
32 週刊ジャーニー
2024年7月18日付け1351号「あなたのビザはどうなる? eVisa申請への道第二回」
33 NTL申請が承認された事を申請者に知らせるUKVIからのメールのサンプル
34 eVisa – House of Commons Library
2024年10月31日付け英国下院図書館研究員 CJ McKinneyのeVisaに関する研究ブリーフィング(英語版)
35 eVisa – House of Commons Library
2024年10月31日付け英国下院図書館研究員 CJ McKinneyのeVisaに関する研究ブリーフィング(日本語訳)