英国のLPA (Lasting Power of Attorney)

英国では、本人が認知症や何らかの事故、又は心臓・脳の病気等で昏睡状態が続いたりして正常な判断が出来なくなった場合、本人に代わって例え配偶者・家族でも銀行口座からお金を引き落としたり、不動産の売却、介護施設への入居等の契約行為は出来ません。その様な場合、本人に代わってどなたかが代理人として事を進めるには裁判所で一定の手続きを踏む必要があり、時間と数千ポンドの費用が掛かります。

その為、本人が正常な判断が出来る間に、その様な事態になったら第三者の代理人にその判断を委ねる事を可能にする為に、LPA – Lasting Power of Attorney と言う制度があり、それは法律的に拘束力が有ります。そのLPAは、委任状作成時点で、本人(Donar) が18歳以上で、そして健全な精神を保持している事が条件です。そして、その代理人(Attorney)は英国居住者や英国籍の所有者である必要は有りません。

委任内容によって、健康・福祉に関する Health and welfare LPA と、不動産・金融等の資産管理に関する Property and financial affairs LPA と2種類あります。

LPAの仕組み

LPA作成方法・登録先 先ずAttorneyを定めます。Attorneyは複数でも構いません。所定の代理委任申請用紙にAttorneyの詳細を記入し、後見人登録事務所(Office of the Public Guardian)に登録します。登録費用は一件当たり£82です。登録が完了するのに、約10週間かかります。登録後に、その委任状は初めて有効になり、Attorneyが委任行為を行う事が出来ます。
LPAの種類 LPAには以下の2種類があります。
Health and welfare LPA(健康・福祉に関する事)
毎日の洗濯・衣服・食事に関する事、医療処置、ケアホームへの引越し、生命維持処置
Property and financial affairs LPA(不動産・金融等の資産管理に関する事)
金融口座管理、請求書の支払い、年金・手当の受け取り、自身の不動産の売却
Attorney Attorneyは18歳以上であれば誰でも良いですが、信頼のおける、そして万一の場合に、本人の代理人を喜んで引き受けてくれる方で、配偶者、家族、親戚、友人、弁護士等の中から選任するのが一般的です。
Replacement Attorney Attorneyが死亡・意識障害(Mental incapacity)、罷免、関係解消、破産等の場合の為に、予備のAttorneyを登録しておく事が出来ます。
署名 LPAを作成後、指定されたAttorney、証人が署名。
LPAの変更・廃止 LPAの内容を変更・廃止したい時や、Attorneyが死亡したりした場合は、後見人登録事務所(Office of the Public Guardian)に手続きが必要です。
本人死亡の場合 本人死亡の場合、LPAは自動的に失効します。そして、本人に関わる事柄は、Attorneyでは無く、Executor (相続執行人)、又は本人代理人に引継がれます。

 

Attorneyの役割

Attorneyは、以下の様な役割が有ります。

Attorneyの求められる行動 *AttorneyはLPAに記載されている事柄に従って、行動する
*LPAに記載されている 本人の要望を優先して判断する
*もし可能なら、出来るだけ本人が判断出来る様に助ける
*いつも本人の利益を最優先して判断する
*本人の人権を尊重する
Attorneyは自身で判断し、他の方に判断してもらう事は出来ません。
Attorneyが複数名居る場合 もしAttorneyが複数名居る場合、以下の点に留意して下さい。
*”jointly”の場合は複数のAttorney全員が合意する必要があります。
*”jointly and severally” の場合は、他のAttorneyと一緒に又は独自に判断出来ます。
Property and financial affairs attorney  Property and financial affairs attorneyは、以下の事柄について判断し、実行します。
*入出金・各種税金の支払い・請求書の支払い
*銀行口座の管理
*家や他の投資資産の管理
*年金・各種手当の収入管理
Attorneyは本人に代わって家の維持や飲食物・日用品等の購入も出来ます。もしHealth and welfare attorneyが居ましたら、本人の医療や日常の暮らしについてそのAttorneyの判断を仰ぎます。
Health and welfare attorney  Health and welfare Attorneyは、以下の様な事柄について判断します。
*日常の生活(洗濯・衣服の着脱・食事)
*医療
*どこで住むか(自宅か施設か)
以下の様な費用が発生する事に就いては、財産管理をしているAttorneyから同意を得て費用を出してもらいます。
*新しい衣服の購入・美容
*自宅や介護施設の自分の部屋の改装
*外出・親戚友人の訪問・ホリデー
 支出明細  Attorneyは費用の支出についてその領収書を含め、記録に残します。
*自宅の売却、医療サービスへの同意
*本人の資産・収入・支出管理
*確定申告(Tax Return)の会計事務所への代行依頼費用
*旅費・文房具・郵便料・電話代等
もしAttorneyが本人の資産を不正流用した事が判明したら、その返却を求められます。
 監査  後見人登録事務所(Office of the Public Guardian)や裁判所は必要に応じて他のAttorneyや家族・銀行・介護人に連絡してAttorney の判断や費用支出が適切かどうか、以下の様な事柄について監査する権限が有ります。
*AttorneyはLPAに記載された事を忠実に実行しているか
*Attorneyは本人の利益を最優先して判断しているか
*Attorneyは本人の資産を不正流用していないか
*Attorneyは本人の人権を無視した行為をしていないか
*本人は良く面倒を見られているか
*LPAは誰かの圧力、又は騙されて作成されたと言う事は無いか
もしAttorneyに疑義がある場合は、OPB (Office of the Public Guardian に相談してみて下さい。詳しくはこちらを参照してください。

 

Deputy (代理人)制度

本人が正常な判断が出来る時に事前にLPAでAttorneyを指名していなかった場合、本人が正常な判断が出来なくなってしまってからどなたかがDeputy (代理人)になる事が出来ます。その詳細は以下の通りです。

 Deputy (代理人) 本人が、脳障害や他の病気、認知症等で判断能力が衰えて来て無能力(Lack of mental capacity)と認められた場合、本人に代わってDeputy (代理人)が重要な判断を下す事が出来ます。通常家族や友人がCourt of Protection (無能力者保護法廷)に申請します。その際、裁判所は2名以上のDeputyを指名する事も出来ます。又は有料で会計士、弁護士等がDeputyとなる事も可能です。
 Deputy(代理人)の種類  その場合、joint Deputyは全てのDeputyが同意して判断する事が求められます。一方、jointly and severally Deputyはそれぞれが単独、又は他のDeputyと同意して判断する事が出来るます。

そして2つの違った役割によって2種類のDeputy があります。
Property and financial affairs deputy …..資産・収入・支払いの管理
Personal welfare deputy ….. 医療関係及び本人の日常の生活の管理
裁判所は本人のおかれた環境が必ずしも本人の為に最も利益の有る形で判断されるのが難しいと思われた時にその様なPersonal welfare deputyを指名します。

 Deputy(代理人)の申請  あなたはProperty and financial affairs deputyかPersonal welfare deputy のどちらか一方か又は両方を申請出来ます。
 Deputy(代理人)の義務 1)本人の利益を第一に判断・行動する
2)本人の過去の行動を考慮する
3)家族・親戚や医者の助言を得ながら高いレベルのサービスを提供する
4)絵や手ぶりで何が起こるのか本人に理解出来る様に伝える
5)重要な判断は全て記録に残す

更に以下の事は禁止されています。
1)危険な事を避ける以外に拘束する
2)延命治療の中止
3)虐待、又は本人の為の判断から何らかの利益を得る
4)遺言書の作成・修正
5)裁判所の許可無しに贈与
6)本人の資産の不正流用
Property and affairs deputyは、以下の事が求められます。
1)自分の資産と本人の資産を別個に管理する
2)本人の資産管理の記録を残す
もし職権乱用・業務怠慢・資産の不正流用等が認められた場合、その資産の返還、罰金、5年の懲役の可能性があります。

より詳しくは、以下のウェブサイトをご参照下さい。

Office of the Public Guardian
PO Box 16185, Birmingham, B2 2WH
 0300 456 0300
 customerservices@publicguardian.gsi.gov.uk
 https://www.gov.uk/government/organisations/office-of-the-public-guardian

GOV.UK – Make decisions on behalf of so:meone
https://www.gov.uk/make-decisions-for-someone

GOV.UK – Make, register or end a lasting power of attorney
 https://www.gov.uk/power-of-attorney

GOV.UK – Lasting power of attorney : acting as an attorney
 https://www.gov.uk/lasting-power-attorney-duties

GOV.UK – Deputies:make decisions for someone who lacks capacity
 https://www.gov.uk/become-deputy