英国の医療介護制度

英国の医療制度はNHS (National Health Service)と呼ばれ、医療費は全額無料です。但し、歯の治療は、18歳未満の未成年者、妊婦、12か月以内の乳児の母親、低所得者を除いて、有料です。

一方、高齢者に対する介護制度は、資産・収入の少ない方に対する公的補助は有りますが、原則、介護費用は全額自己負担です。その為、介護費用を捻出する為に、自宅を売却したり、抵当に入れて介護費用を後払いするケースも有ります。

医療 介護
NHS (National Health Service) 無料
(但し、歯の治療は、18歳未満の未成年者、妊婦、12か月以内の乳児の母親、低所得者を除いて有料)
原則全額自己負担
(現在は個人資産が£23,250未満の資産・収入の少ない人に対する公的補助制度有り。その金額は2023年10月から£100,000に引き上げられる予定。更に、2023年10月から、介護費用の自己負担額は生涯で£86,000を上限とする制度を導入予定。その£86,000に達した場合は、それ以降の介護費用は公的負担となる。)

 

英国の主な公的補助制度

英国には、社会保障・福祉制度の一環として、以下の様な医療・介護に関する公的な補助制度が有ります。

関連サイト
Nursing & Medical Care 看護・医療サービス
NHSが費用負担し、個人負担は無し。
Attendance Allowance 高齢障がい者手当
財政調査無し、非課税、英国公的年金受給年齢以上の身体・精神障がい者で、6ヶ月以上介護要の方が対象。
半日介護(中間、又は夜間 £61.85/週
終日介護(昼夜)£92.40/週
Personal Independence Payment 自立支援補助
財政調査無し、非課税、16歳から英国公的年金受給年齢までの障がい者が対象。
Living component :Standard rate £61.85/週、Enhanced rate £92.40/週
Mobility component:Lower rate £24.45/週、Enhanced rate £64.50/週
Carer’s Allowance 介護者手当
*16歳以上、週35時間以上介護サービスを提供、過去3年間に2年以上イングランドに在住、通常イングランド在住、又は英国軍として海外駐在、全日制・或いは週21時間以上の学生でなく、更に、以下の条件にも合致する事。
*税引き後£128/週の収入が無い場合(英国State Pensionも含む)
*介護者が他のState Benefitを受給している場合は、Carer’s Allowanceの支給額が減額、又は支給されない場合有り。(Overlapping Benefit Rule)
*£69.70/週支給(課税)
被介護者がAA(Attendance Allowance)、PIP (Personal Independence Payment)、又はDLA (Disability Living Allowance)などのState Benefitを受給している事
Continuing healthcare and nursing care 継続的医療・介護
高度なレベルの治療と介護の両方が必要と見做された場合は、NHSが医療費のみならず、介護費用も負担する場合有り。その制度は病院外での在宅介護・ケアホーム・ナーシングホームでも可。

 

英国の介護費用に対する公的補助制度

英国には介護保険制度は無く、高齢者の介護費用は原則、全額自己負担です。しかし、資産・収入の少ない方を対象とした高齢者の介護費用補助制度があります。

その制度を利用する場合、本人のお住まいの地方自治体による本人の要介護度調査(Care assessment)、資産・収入の財政調査(Financial assessment – Means Test)が行われ、それは以下の様に居住する国によって異なる資産の上限・下限によって、公的補助を受けられるか否か、受けられる場合の公的補助の金額が異なり、そして、個人費用控除(Personal Expense Allowance)が認められます。

上限 下限 個人費用控除
(Personal Expense Allowance)
England £23,250 £14,250 £24.90/週
Scotland £28,750 £18,000 £24.90/週
Wales £50,000 n/a £33.00/週
Northern Ireland £23,250 £14,250 £27.19/週

 

イングランドの介護費用に対する公的補助制度

イングランドに於ける資産・収入の少ない方に対する公的補助の金額の算出方法は以下の通りです。

資産 資産の収入への加算 介護費用 個人費用控除
£23,250以上 n/a 全額自己負担
(これをSelf-Fundingと言います。)
n/a
£23,250未満
£14,250以上
£14,250を超える資産の£250毎に£1/週の追加収入と見做される。即ち、£14,250の資産は、£1/週の追加収入、£23,250の資産は、£36/週の追加収入と見做され、収入に加算される。 自身の収入を上限に自己負担。自身の収入を超える分が公的補助される。(これをLA-Fundingと言います。LAとは、Local Authorityの略です。) £24.90/週
£14,250未満 収入に加算されない。

この介護費用の公的補助を受ける場合、お住まいの地方自治体にご自身の資産・収入の全てを証拠書類と共に申告し、財政調査(Financial Assessment – Means Test)を受けます。

(資産)預貯金・金融商品・土地建物の不動産、又は負債等
(収入)年金・公的手当・賃貸料等

そして、以下の場合は、自己名義の自宅は、その財政調査の上では自分の資産には含まれません。その自宅が共同名義の場合は、本人の所有割合分のみが資産に含まれます。
1)在宅介護や、短期でCare Homeに入居の場合
2)配偶者、18歳未満の子、60歳以上又は障害のある近い親戚と同居している場合
3) ケアホームに入居後、最初の12週間の移行期間

介護費用の公的補助を受けながら、ケアホームに入居する場合は、その入居者が居住する地区で、必要とする介護サービスが提供出来るケアホームへの入居が勧められます。しかし、もし何らかの理由で、より介護費用の高いケアホームに入居を希望する場合は、家族・親戚・知人等の何方かがその差額分をTop-up feeとして立て替える事が出来るのでしたら認められます。

参考までに、Kingston upon Thames のAdult Social Care Services – Financial Assessment Form は、右のPDF ファイルをクリックしてご覧頂けます。参考にして頂ければ幸いです。

「英国の介護制度 – 在宅とケアホームの介護費用について」のガイドブック

英国の介護制度
在宅とケアホームの介護費用について

終活ウェブサイト管理者が発行したガイドブックです。全25ページで、事前準備、在宅介護かケアホームか、財政調査、介護費用の支払いを避ける為の資産の譲渡、NHSの介護費用の補助、介護費用の捻出方法、もしあなたの財政状況が変わった場合、まとめ等の項目について解説されています。更に、補足資料として、日本の医療・介護保険制度に就いても説明が有ります。

 

英国イングランドの介護制度変更

英国イングランドは、NHSと介護制度変更の財源として2022年4月からNI Contributionを1.25%引き上げ、2023年4月にはそれをHealth and Social Care Levyとして1.25%の新税に切り替える予定です。そして、2023年10月から、介護費用個人負担額の上限£86,000を設定し、個人の介護費用負担額が一生涯での累積でその上限額に達した場合は、それ以降介護費用は公的負担となります。(ケアホームに入った場合の入居費・食費・水道・光熱費・管理費等は通常の生活費と見做され、介護費用とは見做されず、介護制度の対象外になります。この介護費用に含まれるのは、あくまで飲食・掃除・洗濯・排泄・入浴・衣服の着脱等の日常生活を送る上で必要な行動・動作のサポートを受ける上で掛かる費用です。)

現行制度
(2023年9月まで)
新制度
(2023年10月以降)
介護費用が全額自己負担の個人資産額 £23,250以上 £100,000以上
介護費用が一部自己負担・一部公的負担の個人資産額 £23,250未満
£14,250以上
£100,000未満
£20,000以上
介護費用が全額公的負担の個人資産額
(但し、個人の収入分は個人負担)
£14,250未満 £20,000未満

詳しくはこちらをご覧ください。

英国の介護制度に関するサイト

英国の介護制度ついて、以下のサイトもご覧ください。

NHS
When the council might pay for your care
AgeUK
Paying for residential care
AgeUK
Do I have to sell my home to pay for care ?
AgeUK
Deprivation of assets
 AgeUK
Care home top-up fees
Which?
Local authority funding for care homes
UK Care Guide
Paying for care in 2020 – 12 ways to pay
Independent Age
Paying for care