欧州の介護制度

英国日本の医療介護制度に加えて、参考までに欧州の他の国の介護制度について私なりに調べた内容を以下にお知らせします。

オランダ
人口約1,700万人のオランダは1968年に世界で初めて介護保険制度を導入しました。基本的に介護サービスは全額税金で対応されています。(一部自費あり)介護スタッフの給与体系は一般企業と同等で介護・看護人材ともに豊富です。すべての資格で5年毎に免許更新テストがあり、資格に応じて一級から五級で給与が決まります。要介護度は1から10に分類されています。
(出典 : 特別養護老人ホーム敬愛ホームオランダ研修 2013年5月6月)
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フランス

フランスの人口は約6,700万人で、1997年にPSD (特定介護給付制度)が出来、2002年にAPA (個別化自律手当)に変更され高齢者介護手当制度として現在に至ります。要介護度は4段階に区分されています。介護サービスの自己負担額は収入に応じて設定されており、平均自己負担額は在宅介護で1-2割、ケアホーム介護で3-4割で残りを国・県が負担します。要介護者の約6割は在宅介護で、約4割がCare Homeで介護を受けています。在宅介護の場合の介護費用支給限度額は以下の通りです。
要介護度1 約€1,288
要介護度2 約€1,104
要介護度3 約€828
要介護度4 約€552
(出典 : 海外社会保障研究2007年冬号 フランスの高齢者介護制度の展開と課題 駒沢大学原田啓一郎准教授)
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ドイツ
 ドイツは人口約8,300万人のヨーロッパで一番人口の多い国です。医療・介護保険の先進国で、介護保険制度は1995年にスタートしました。日本は2000年に介護保険制度が始まりましたが、その制度設計は多くをドイツから学び導入しました。介護が必要になったら要介護認定を受けます。しかし、ドイツは日本と違って、その要介護認定に応じた介護サービスは現物給付か現金給付かを選択出来ます。2/3の方が現金給付を選択し、介護費用の月額現金給付額は最大€901です。この介護費用の現金給付の利点は、介護サービスを家族や知人に行ってもらう場合でもそれらの介護人にその介護給付金から報酬を払う事が可能である事です。ドイツの介護保険は医療保険と一体となっており、給与の3.05%の医療介護保険料を被雇用者と雇用者が折半します。ドイツには日本の特養(特別養護老人ホーム)の様な格安介護施設は無く、ケアホームに入居する場合の平均費用は月に€2,800になるとの事です。
(出典 : 医療法人社団悠翔会 ドイツの介護制度 2019年6月)
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オーストリア

 オーストリアの人口は約890万人で、介護制度は1993年に始まりました。介護レベルは7段階に区分され、夫々の介護度に応じて以下の月額介護手当が現金給付されます。
介護度1 約€160
介護度2 約€295
介護度3 約€460
介護度4 約€690
介護度5 約€937
介護度6 約€1,308
介護度7 約€1,719
オーストリアでは子は親に対する扶養義務はありませんが、要介護者の約80%が在宅介護で主に近親者の介護を受けて、本人の介護手当から報酬が支払われます。ケアホームに入居する場合、本人の不動産を含む全資産を計算し、その80%までは介護費用を支払う事となり、それを超える場合は公的補助を受けられます。
(出典 : 2020年オーストリアの介護手当 星槎道都大学社会福祉学部 小早川俊哉
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スイス

スイスの人口は約860万人で、介護制度は社会が基本的に介護の責任を負い、本人に充分な収入や資産が有れば介護費用を本人も応分の負担をしますが、子供は一部の高額所得者を除いて介護費用の負担を求められません。本人の資産が無くなれば年金補充手当によって介護費用を支払います。介護費用は健康保険と介護保険によって一部支払われますが、殆どの場合介護費用の一部しか支払われず年金で自己負担分を支払われない場合が多いです。その様な場合、在宅介護は自己資産の1/10まで、ケアホームの場合は1/5までは資産を取り崩して自己負担が求められます。それを超える分は年金基金から支払われます。資産が無い場合は年金が少額であっても介護費用は公的年金の補充で賄われますが、家等の資産が有る場合はそれを売却して介護費用に充てる場合もあります。
(出典 : 2010年6月 スイスの介護事情 ジュネーブ日本倶楽部勉強会 中西眞理)
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デンマーク

 人口約580万人のデンマークは世界で最も行き届いた福祉制度を確立した国の一つと言われています。デンマークは個人所得税が平均で50%と驚くほど高く、VATも25%ですが、医療・出産・教育・介護等の社会福祉サービスは全て無料と高負担高福祉の国です。教育に就いては無料だけでは無く、18歳以上の学生は返済義務の無い生活支援金ももらえます。その様に税金が高くとも社会福祉サービスが充実しているため、デンマークは世界幸福度ランキングでも何度も一位になっており、国民の8割は税金は高いもののデンマークに生まれて良かったと誇らかに言っているとの事です。因みに日本の幸福度ランキングは世界で28番目だそうです。
(出典 : デンマークに学ぶ高齢者福祉 国際大学GLOCOM主任研究員猪狩典子 2013年3月)
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スウェーデン

スウェーデンは人口約1,020万人と北欧で一番人口の多い国です。近年、他のEUやEU外からの移民で人口が増加しています。税金が平均30%、VATが25%と高く、介護費用は殆ど掛からずに受けられます。スウェーデンの介護サービスは「社会サービス法」に基づき、市町村(コミューン)が提供します。日本の様な保険制度では無く、基本的にコミューンと利用者の自己負担で賄われます。更に日本の様な要介護度の区分はありません。
(出典 : かいごGarden スウェーデンから学ぶ福祉・介護。福祉大国の仕組みとは。2017年6月)
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フィンランド

フィンランドの人口は約550万人です。1970年に子の親の扶助義務を廃止し、男女共に労働参加の継続が可能で、高齢者への所得保障は国が、福祉サービスは地方自治体が責任を負います。介護は可能な限り自宅で受けられる様に仕向けられています。公立の老人ホームでは年金などの本人の収入の80%で医療費、食費も含めてあらゆるケアが無料で受けられます。残りの20%は本人が自由に使えます。民間の老人ホームの入居費用は月額€4,000です。高齢者の介護を親族(家族・親戚・友人等)がする場合は、介護者が地方自治体と契約を結び、親族介護給付を受け取る事が出来ます。そして介護者には休暇・社会保障が付与されます。
(出典 : HuffPost 2016年5月 介護離職は無いの? 「福祉の国」フィンランド。高齢者の暮らしは日本とどこが違うのか。)
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スペイン

スペインは人口約4,700万人で、介護法は2006年成立、2007年施行されました。要介護度は軽度(一日に1回は介助が必要)、重度(一日に2-3回の介助が必要)、全面的要介護(自力では全く何も出来ず常に介護が必要)の三つに区分されます。介護サービスは在宅介護、デイケアセンター、ナイトケアセンター、ケアホームなどがあります。介護サービスは利用者本人の経済的能力(収入・資産)に応じて本人の費用負担は3割は超えないとの方針です。
(出典 : 独立行政法人 労働研究研修機構 2007年1月 スペイン介護法 2007年から施行)
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